経管栄養ってどんな仕組み?胃ろう・腸ろう・経鼻の違い

医療的ケアの基本と実践ガイド

各手技の特徴と家庭・施設での実際


はじめに

「経管栄養」と聞くと、医療的な響きにちょっと身構えてしまう方も多いかもしれません。でも、これは食べられない方の「命をつなぐ食事」。家庭や施設、学校現場でもよく見られるケアの一つです。

この記事では、経管栄養の基本的な仕組みから、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養の違い、そして実際の現場での手技や注意点までを、わかりやすく解説していきます。


経管栄養とは?仕組みと目的をやさしく解説

経管栄養とは、口から食事を摂ることが難しい人のために、胃や腸へ直接栄養を届ける方法です。

なぜ必要になるの?

たとえば次のような理由で、経管栄養が必要になることがあります:

  • 脳梗塞や神経疾患で嚥下(えんげ)機能が低下している
  • 誤嚥性肺炎を繰り返してしまう
  • 消化管以外の病気で栄養摂取が困難
  • 一時的に口から食べられない(術後など)

栄養の種類は、液体状(ミルク状、透明なものなど)や半固形状の「経腸栄養剤」を使います。消化吸収しやすく、必要なカロリーや水分が調整されています。

「胃ろう・腸ろう・経鼻」ってどこが違うの?

実は、チューブの「入口」と「目的地」が違うだけで、やっていることの本質は同じです👇

種類入口栄養が届く場所
経鼻経管鼻から
胃ろうお腹に小さな穴
腸ろうお腹に小さな穴小腸(空腸や十二指腸)

胃ろうとは?最も一般的な経管栄養

胃ろうの特徴

胃ろう(PEG)は、お腹の皮膚から内視鏡で胃にチューブを通す方法。比較的安全で、長期的に経管栄養が必要な方に使われることが多いです。

胃ろうのメリット

  • 自宅や施設でも管理しやすい
  • チューブ交換はカテーテルの種類にもよりますが、月1回〜2ヶ月に1回(半年〜1年に1回のものも)
  • 吸収効率もよく、栄養剤の選択肢も多い

注意点

  • 抜けると穴がふさがるのが早い(特に胃ろうは速やかに対応を)
  • 発赤・肉芽・感染などの皮膚トラブルに注意
  • 注入中の体位保持(30度以上)と誤嚥対策が大切

腸ろうとは?胃を使えない場合の選択肢

腸ろうの特徴

胃を使えない・胃食道逆流が強い方に使われるのが腸ろう(空腸ろうや十二指腸ろう)。胃の先に栄養を直接流し込むことで、誤嚥や逆流のリスクを減らせるのがポイントです。

腸ろうのメリット

  • 誤嚥や逆流のリスクが高い方に適している(胃を通らないため)

注意点

  • 注入速度は胃ろうに比べてゆっくり(1回30分〜90分程度かかることも)
  • 消化管の状態に応じて栄養剤の調整が必要
  • 医療的サポートが多めに必要な場合も

経鼻経管栄養とは?短期利用や医療現場で多い方法

経鼻経管の特徴

鼻から胃にチューブを通す経鼻栄養は、短期間の利用や一時的な栄養補給に適しています。

経鼻経管のメリット

  • 手術なしで導入できる
  • 入院中など、すぐに始められる

注意点

  • 長期的には鼻や喉への刺激が強い
  • 見た目が目立つため、心理的負担も大きい
  • チューブのずれや誤挿入に注意

家庭や施設での経管栄養ケアの実際

✅ よくある流れ

  1. 手洗い・消毒
  2. 注入準備(栄養剤の温度調整・準備)
  3. 体位保持(30度以上をキープ)
  4. 注入(30分~1時間)
  5. 後のフラッシュ(ぬるま湯で洗浄)

✅ よくあるトラブルと対処

トラブル原因対処
チューブの詰まり栄養剤の残留、水分不足ぬるま湯で十分流す、細い管の場合は特に注意
チューブの抜去自己抜去、固定不良すぐに医療機関に相談、特に胃ろうは穴がふさがりやすいため、速やかに
注入後の嘔吐・下痢注入速度が早すぎ、冷たすぎなど温度調整、ゆっくり注入、栄養剤の見直し

📝補足メモ:水分不足とチューブの詰まりについて
体内の水分が不足していると、消化液や腸液が濃くなり、チューブ先端で栄養剤が滞留・固着しやすくなることがあります。
特に腸ろうでは腸管内の水分が少ないと詰まりやすくなることも。
体全体の水分バランスに目を向けることも、スムーズな注入を助けるポイントです。

まとめ|「経管栄養=医療行為」でも、生活の一部

経管栄養は、確かに医療的な手技。でも、その本質は「食べること」「生きること」を支える日常の営みです。

胃ろう、腸ろう、経鼻、それぞれに特徴と適応がありますが、大切なのはその人らしい生活を支える視点。家庭でも施設でも、安心してケアが続けられるよう、関わる全ての人が知っておきたい内容です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました