はじめに
「経鼻経管栄養、毎日頑張ってくれているのは分かっているけれど…」
子どもや高齢のご家族が、チューブを入れるたびに苦しそうに泣いたり、激しく嫌がる姿を見るのは、本当に胸が痛むものです。
「どうしてこんなに嫌がるんだろう?」「少しでも楽にしてあげたい…」
そんな心の葛藤を抱えているご家族は、決して少なくありません。
この記事では、看護師の立場から、経鼻経管栄養が「なぜつらいのか」、そして「どうすれば少しでも本人の気持ちに寄り添えるのか」を、専門的な視点と温かい心でお伝えします。
ストーリー|みのりちゃん(5歳)の場合
みのりちゃんは、心臓の病気を抱えて生まれました。小さな体で何度も手術を乗り越えてきましたが、嚥下の機能がうまく育たず、ご飯を口から食べることができません。
本当は胃ろうができればよかったのですが、心臓への負担を考えるとそれも難しく、今は「経鼻経管栄養」が生きるための大切な方法になっています。
けれど、チューブを入れるたびに、みのりちゃんは全力で嫌がります。両手でチューブを押し返そうとしたり、顔を左右に激しく振ったり、泣きながら「いやだ!」と叫びます。
そのたびにSpO₂(血中酸素飽和度)が一時的に下がることもあり、見ているお母さんは胸が締めつけられるような思いになります。
「こんなに嫌がることを、どうして毎日続けなきゃいけないの?」
お母さんは、涙をこらえながら、チューブを支える手に力を込めます。
なぜこんなに嫌がるの?経鼻経管栄養が「つらい」理由
では、なぜ経鼻経管栄養は、本人にとってこんなにも大きな負担になるのでしょうか。
1. 身体的な不快感
- 鼻の違和感: 鼻の粘膜はとてもデリケートで、チューブが常に触れているため、痛みやかゆみが出やすくなります。
- つば・鼻水の処理が難しい: チューブがあることで、飲み込みがスムーズにできず、のどに流れてむせたり気持ち悪くなることがあります。
- 皮膚トラブル: チューブを固定するテープの部分がかぶれたり赤くなったりして、さらに不快感が強まります。
2. 心理的なストレス
- 恐怖や不安: 挿入の瞬間は「オエッ」となる感覚が強く、何度も経験していても「次もつらいかも」と思ってしまいます。
- 見た目の影響: 特に思春期の子どもや高齢者は、「鼻に管が出ている」こと自体が恥ずかしさやストレスにつながります。
3. コミュニケーションの難しさ
小さな子どもや意思疎通が難しい方は「嫌だ」という思いを言葉で表現できません。その結果、泣いたり暴れたりするしかなく、周囲もつらさを理解しきれないままケアを続けざるを得ないことがあります。
“つらさ”に寄り添うケアの工夫
経鼻経管栄養は、お子さんやご家族の命と安全を守るための、大切な医療的ケアです。工夫次第で「少しでも楽に」「少しでも安心して」受けられるようになります。
1. タイミングを工夫する
- 子どもの機嫌がいい時や眠気がある時に挿入するとスムーズなことがあります。
- 無理に押さえつけるより、「今なら大丈夫そう」というリズムを見極めることが大切です。
2. 安心できる人が行う
- お母さんやお父さん、信頼している看護師など、“安心できる人”がケアにあたることで、本人の不安は和らぎます。
3. 声かけの工夫
- 「今からごはんが入るよ」「いっしょに頑張ろうね」「終わったら絵本読もうね」といった、短く優しい言葉かけは、本人にとって大きな安心材料になります。
4. 姿勢や環境を整える
- 抱きかかえる姿勢や、少し上を向いた体位で行うと負担が減ることがあります。
- 好きなぬいぐるみを持たせる、音楽を流すなど「安心できる環境」を準備しましょう。
5. グッズを活用する
- 肌にやさしい固定テープやチューブカバー、カラフルなデザインの補助具などのアイテムは、皮膚トラブルを防ぐだけでなく、本人や周囲の心理的負担も軽減してくれます。
まとめ|「つらさ」を理解することがケアの第一歩
経鼻経管栄養は命を守るために必要なケアですが、その背景には、本人が感じている「痛み」や「不快感」、そしてご家族の「やらなきゃいけないけど、つらい」という葛藤があります。
大切なのは、「この子は今、どう感じているのだろう?」と、その気持ちに寄り添うこと。そして、一人で抱え込まず、医療者や支援者と一緒に「どうすれば少しでも楽になるか」を工夫していくことです。
「少しでも楽にできる方法はないかな」そう思って行うケアは、きっと本人にも伝わります。
そんなあなたの思いやりが、何よりのケアになりと思います。
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